電子部品業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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電子部品業界は、IoTや5G、先端自動車技術の発展により世界規模で需要が高まっており、大手企業によるM&Aが活発な状況です。また、事業承継や再編を目的とした売却案件も増加傾向にあります。

本記事では、電子部品業界のM&A動向や、M&Aを活用するメリット、代表的な事例、注意点などについて解説します。

電子部品業界の概要

電子部品業界は、製造業の根幹を支える業界の一つです。高度な技術力によって世界シェアを拡大しており、近年はIoTや5Gといった新市場でも成長が期待されます。まずは、電子部品業界の定義や特色について見ていきましょう。

電子部品業界の定義

電子部品業界とは、自動車やスマートフォンなどに組み込まれている電子部品などを製造している業界のことです。

電子部品とは、電子回路に使用する部品のことを指し、「能動部品」「受動部品」「機構部品」に分類されます。

能動部品とは、入力部と出力部を持っており、与えられた指令によって特定の電力を出力する電子部品のことで、トランジスタ・IC・ダイオードがこれに該当します。

受動部品とは、電力を消費・放出・貯める機能を持つ電子部品を指し、コンデンサ・抵抗・コイルがこれに該当します。

機構部品とは、部品自体に電気的な機能は無く、代表的なものとしてはスイッチ・コネクタ・基板などです。

電子部品業界の特色

日本の電子部品業界は高い技術力が特徴です。海外へのシェアも広げており、現在では世界シェアの30〜40%を確保しています。また、電子部品業界は、モノ作りの根幹である組立メーカーと密接に関わっており、この最終製品メーカーの新製品登場や新技術台頭に大きな影響を受ける業界でもあります。

電子部品業界はこれまで、スマートフォンの普及と共に堅調に成長を遂げることができましたが、昨今は海外の格安スマートフォンの登場と共に生産量と利益率の下降が目立つ状況です。しかしその一方で、自動車の自動運転技術の台頭や、人手不足に対応した工場の自動化によるスマートファクトリー化など「IoT=Internet of Things」に向けた需要が拡大しています。

IoTにより新たな市場が生まれたことを受け、電子部品業界は現在新規市場開拓に取り組んでいます。完成品メーカーに向けた新商品提案営業や、製品設計段階からの組み込み提案など、これまで取引がなかった業界へのアプローチも、その一環といえる取り組みです。

電子部品業界にとっての今後の有望市場と言われているのが、5G無線通信サービスです。スマートフォンのインターネットコンテンツの大容量化に伴う機能向上と共に、自動車における5G無線通信による自動運転では、車載機器の需要の増加が予想されており、大きな需要の増加が期待できます。

電子部品業界のM&A動向・市場規模

米・Fortune Business Insightsの「電子コンポーネント市場規模、共有|成長[2032]」によると、2024年の世界の電子部品市場は393.63億米ドルでした。2025年はさらに拡大し、428.22億米ドルに達する見込みです。

電子部品出荷額 年度別推移
参考:電子部品グローバル出荷統計 | JEITA 電子部品部会

電子部品部会の2024年度の日本における電子部品の出荷額は4兆5,323億円で、過去最高を記録しました。この10年間で、年ごとの増減はあるものの全体として増加傾向にあります。

また、コロナ禍によるテレワークの普及に伴いIT機器の需要が高まり、生成AIやデータセンター関連の需要も増加傾向です。民生用IT機器の回復や5Gの普及、DX、IoT、次世代自動車(EV・自動運転)向けの需要拡大も継続しています。

電子部品でM&Aを活用するメリット

電子部品業界でM&Aを活用する主なメリットとして、以下の3点を紹介します。

高度化するニーズに対応できる

電子部品業界では、今後IoTや自動運転の実用化が進むことで、部品の軽量化や薄型化、省エネ化、そして長寿命化といったニーズがますます高度化していくことが考えられます。

さらに、人手不足が業界全体で深刻化する中、生産効率を上げるために、複数の電子部品を組み合わせたモジュール部品の需要が高まる見込みです。

このような複雑化する市場ニーズに応えるためには、先進的な技術力やノウハウを持つ企業とのM&Aが鍵となります。M&Aを通じて、双方の企業が持つ専門知識や経験を融合させることで、新たな技術や製品開発が可能となり、業界内での競争力を強化することができます

スピーディーな海外進出を実現しやすい

電子部品業界では、精密さが求められる製品の多くで海外企業が6割以上のシェアを占めており、競争が激化しています。こうしたなかで、事業規模をさらに拡大し、競争力を強化するために、多くの電子部品メーカーが海外進出を模索しています。

しかし、新たな市場での基盤を一から築くためには、膨大な時間と労力が求められ、容易ではありません。そのため、既に海外市場での成功を収めている企業や、豊富な海外展開のノウハウを持つ企業と、M&Aを通じて提携することが、スピーディーな海外進出を実現するための有効な手段となります。

このようなパートナーシップにより、迅速かつ効果的に新市場への参入が可能となり、事業拡大を加速させることが期待されます。

安定的なサプライチェーンを構築できる

M&Aを活用することで、安定したサプライチェーンを構築することができます。これは電子部品に関連する事業を展開する企業にとって、極めて重要なメリットです。

電子部品メーカーを含む多様な取引先とのサプライチェーンは、その一部が欠けるだけで製造ラインが停止し、全体の生産活動に重大な影響を与えるリスクがあるため、各企業にとって欠かせない存在です。しかし、近年では自然災害の頻発や国際的な政治情勢の不安定化が顕著であり、サプライチェーンの脆弱性がより一層浮き彫りになっています。

こうした不確実性の高い環境下において、電子部品メーカーとのM&Aは、サプライチェーンを強化し、安定性を確保するための有効な手段です。これにより、企業は供給リスクを低減し、持続的な事業運営を確実にすることが可能になります。

電子部品のM&A事例

電子部品業界では、競争力や技術力の向上や、新たな市場領域の獲得を目的に、M&Aが活発に行われています。ここでは、近年の代表的な事例をいくつか見ていきましょう。

アルコニックス株式会社とジュピター工業株式会社

2022年4月、アルコニックス株式会社は、ジュピター工業株式会社の全発行済み株式を取得し、連結子会社化しました。

このM&Aは、アルコニックス株式会社が自社の事業基盤を強化し、シェア拡大を図る一環として実施されたものです。ジュピター工業株式会社の技術と市場へのアクセスを活用することで、製品ラインアップの強化や、新規市場の開拓に寄与することが期待されています。

イリソ電子工業株式会社と有限会社エスジーディー

2022年1月、イリソ電子工業株式会社は、有限会社エスジーディーを完全子会社化しました。

売り手となった有限会社エスジーディーは、主に金型部品の製造・販売を手がける企業です。イリソ電子工業株式会社はこのM&Aにより、射出成形金型を含む生産能力の強化と、体制の整備を目指しています。

株式会社シキノハイテックと株式会社アウトソーシングテクノロジー

2024年1月、株式会社シキノハイテックは、株式会社アウトソーシングテクノロジーからサンシン電機事業所の一部を譲り受けました。この譲渡の対象には、電子部品や完成品の設計・生産、ならびに無線機器の設計・製造事業が含まれています。

買い手となった株式会社シキノハイテックは、この事業譲渡により、事業規模の拡大と技術力の向上を図ることを目指しています。売り手となった株式会社アウトソーシングテクノロジー側も、成長戦略の一環としてこの譲渡に合意しました。

Guan Zhi Holdings Limitedと台湾FIRST INTERNATIONAL COMPUTER, INC

2024年10月、グンゼ株式会社の100%子会社である香港のGuan Zhi Holdings Limitedは、発行済株式の85.1%および、日本と米国での電子部品タッチパネル事業を、台湾のFIRST INTERNATIONAL COMPUTER, INC(以下、FIC)に譲渡しました。

このM&Aは、グンゼ株式会社が非コア事業を整理し、より成長が見込まれる分野にリソースを集中させるための戦略的決定として行われました。

買い手となったFICは、電子部品業界での世界的な地位を持つ企業です。この譲渡により、FICは自社の技術と市場シェアをさらに強化することを目指しています。

ローム株式会社とラピステクノロジー株式会社

2024年4月、ローム株式会社は、100%子会社であるラピステクノロジー株式会社を吸収合併しました。

この合併は、市場の急速な変動に対応し、既存製品の強化と高付加価値製品の開発力を向上させることで、競争力をさらに高めるための経営体制の構築を目的としています。

ルネサスエレクトロニクス株式会社とAltium Limited

2024年2月、ルネサスエレクトロニクス株式会社は、オーストラリア発祥のプリント基板設計ソフトウェア大手Altium Limitedの買収を発表しました。このM&Aの狙いは、電子機器設計の複雑化や短納期化など、市場ニーズの急速な変化に対応することです。ルネサスエレクトロニクス株式会社は今後、両社の技術が統合された、オープンな開発プラットフォームの構築を目指しています。

TDK株式会社とQEIコーポレーション

2025年6月、TDK株式会社は、QEIコーポレーション(以下、QEI)の半導体製造装置向けRF(高周波)電源ビジネスの関連資産を取得しました。QEIは、プラズマCVDやエッチングなどの半導体製造工程で重要なRF電源装置やインピーダンスマッチング装置の設計・製造に強みを持つ企業です。TDK株式会社はこれまで直流電源装置で培った実績に加え、QEIのRF電源ソリューションを取り込むことで、半導体製造装置市場における事業基盤を大幅に強化し、顧客への提供価値の向上を図ります。また、このM&AによってQEIのRFチームもTDK株式会社に加わりました。今後はグローバルな販売・サポート・サービスネットワークを活用して、新しい製品ラインの成長を加速させていく方針です。

電子部品におけるM&A成功のポイント・注意点

電子部品のM&A成功には、将来の市場動向を見越した技術力評価や、安定した原材料調達経路の確認に加えて、規制物質の有無を詳しく調査することが不可欠です。

経済状況と市場の影響を考慮する

電子部品業界は、経済状況や市場のニーズによって売上が大きく変動します。M&Aを検討する際、その時点では需要が高い製品も、5年後や10年後には同じように需要が続くとは限りません。

そのため、将来の市場動向を予測し、変化に対応できる技術力やノウハウを持っているかどうかを慎重に評価することが重要です。

また、市場のニーズが変わった場合でも、新たな製品やサービスを開発できる柔軟性を持つ企業とのM&Aを検討することが、長期的な成功を収めるための鍵となります。

原材料調達国・調達経路を確認する

電子部品の製造には、レアメタルや希少鉱物が多く使用されており、その多くは発展途上国で採掘されています。しかし、これらの資源が採掘される国々では、政治的な不安定さや紛争が頻発していることが少なくありません。

そのため、M&Aを検討する際には、対象企業がどの国からどのような経路で原材料を調達しているのかを詳しく確認する必要があります。特に、現地の情勢悪化や不法行為、人権侵害、さらには採掘規制が将来的に供給を妨げるリスクが無いかを慎重に評価することが求められます。

これにより、長期的に安定したサプライチェーンを確保し、企業全体のリスクを低減することが可能となります。

規制に該当する物質が使用されていないか確認する

電子部品業界を含む製造業界では、廃棄物や環境への影響に関する法令や規制を遵守することが求められています。特に、世界的に有害物質に対する規制が厳格化されているため、注意が必要です。

もし、売り手企業が規制対象の物質を使用していることに気付かずに取引が成立した場合、買い手企業はその責任を負うことになり、取引先や世間からの信頼を失うリスクもあります。

したがって、デューデリジェンスで事前に綿密な調査を行い、取引先が信頼に値する企業であるかを確認することが不可欠です。

電子部品における今後のM&Aの課題と展望

電子部品業界では、半導体をはじめとする高機能部品の需要拡大を背景に、大手企業によるM&Aが加速しています。市場では、事業承継や事業再編を目的とした売却案件も増加傾向にあり、実際に成約となる例も多くなっています。

一方で、買収後のシナジーを創出したりサプライチェーンを統合するには、精緻な戦略設計が欠かせません。さらに、規制物質や原材料調達ルートの確認といった環境・コンプライアンス対応も求められます。

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よくある質問

  • 電子部品業界とはどのような業界ですか?
  • 電子部品業界は、半導体やコンデンサ、コネクタなど電子機器の基盤となる部品を開発・製造・供給する産業です。スマートフォンや自動車、家電など幅広い分野で不可欠な役割を担い、技術革新やグローバル競争が激しい業界です。
  • 電子部品業界でM&Aを活用するメリットは何ですか?
  • 主なメリットは、①高度化するニーズに対応できる技術力強化、②スピーディーな海外進出、③安定的なサプライチェーンの構築です。これにより競争力向上や事業拡大が実現しやすくなります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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