給食業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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給食業界のM&A動向について

給食業界は、共働き世帯の増加や高齢化社会の進展により、需要が拡大している成長産業です。一方で、原材料費の高騰や人材不足など、経営環境は厳しさを増しています。そこで注目されているのが、M&Aを活用した経営基盤の強化です。

本記事では、給食業界の現状とM&Aの動向、具体的な事例から成功のポイントまで詳しく解説します。給食業界におけるM&A動向や市場規模を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

給食業界の概要

給食業界は、学校や病院、企業など、さまざまな施設で食事サービスを提供する業界です。社会インフラとしての役割を担い、人々の健康と生活を支えています。

ここでは、給食業界の定義や特色について見ていきましょう。

給食業界の定義

給食業界は、主に「営業給食」と「集団給食」に分類されます。

「営業給食」とは、レストランや一般食堂、専門料理店等の飲食店やホテル、旅館などの宿泊施設での食事・宴会料理などのことです。

「集団給食」とは、学校給食や、社員食堂などの社食、病院給食などのことをいいます。

また「営業給食」は、不特定多数の顧客に飲食サービスを提供することに対して、「集団給食」は、特定多数の顧客に継続的に飲食サービスを提供する点が異なる点です。

給食業界の特色

給食業界の特色として、家族構成や世帯収入などの社会的、経済的側面が大きく影響することが挙げられます。共働きの世帯が増えたことによって、中学や高校でも学校給食へのニーズが高まってきています。これは学校給食を取り入れることにより、共働きの夫婦への負担が減るためだと考えられるでしょう。

また、同様に保育所給食へのニーズも高まっています。待機児童問題の影響から認可外保育所や特定地域保育事業などが増加していることに加え、園内調理に切り替える保育所も増加していることが、大きな要因です。

内閣府の調査によると、平成9年以降は、常に共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回っており、それが、学校給食や保育所給食のニーズの高まりに結びついています。

厚生労働省の調査によると、保育所等の利用児童数は2017年の2,546,669人から2024年の2,705,058人と人口減少が問題になっているなかでも増加していますが、2021年の2,742,071人をピークに高止まりしています。

また、高齢化社会の進行による、高齢者施設給食への注目も高まっているように、給食業界は社会的、経済的側面からの影響が大きい業界といえるでしょう。

給食業界の動向・市場規模

給食主体部門における市場規模推移
参考:【令和 4 年】 Ⅰ.外食産業の市場規模

一般社団法人「日本フードサービス協会」によると、「営業給食」と「集団給食」からなる「給食主体部門」の2023年の市場規模は20兆2,793億円であり、前年より18.3%増加しました。内訳は、営業給食が17兆1,052億円、集団給食が3兆1,741億円です。

この背景には、コロナ禍による行動制限の解除に伴い人流が回復したことや、物価高の影響でメニューの価格改定が継続したことがあります。また、4月に入国規制などの水際対策が終了し、インバウンド需要が回復したことも、市場拡大の要因といえるでしょう。

一方で、給食業界は、原材料費やエネルギーコストの高騰、人手不足といった課題も表面化しています。特に、中小企業では経営の安定性が求められており、M&Aによる経営基盤の強化が重要な選択肢となっています。

給食業界でM&Aを活用するメリット

給食業界でM&Aを活用することで、さまざまな経営課題の解決が可能です。代表的なものとしては以下が挙げられます。

各メリットについて、詳しく見ていきましょう。

スケールメリットによりコストを削減できる

M&Aによって事業規模を拡大することで、給食業界における最大のコストである「食材費」を削減できます。

業務用食材を大量に調達できる体制の構築により、仕入れ単価の引き下げや安定調達が実現可能です。薄利多売になりがちな給食ビジネスにおいて、収益改善の鍵を握る要素といえるでしょう。

ノウハウの承継により組織体制を最適化できる

給食業務は、調理、衛生管理、栄養管理、配送といった高度で多岐にわたるオペレーションが求められます。

M&Aを活用すれば、売り手企業が有する厨房設備や作業マニュアル、人材教育制度などを引継げるため、作業効率が大幅に改善されます。その結果、労働負担の軽減や人件費の最適化につながり、持続可能な運営体制の確立が可能です。

顧客基盤・人材の引継ぎによる事業力強化が期待できる

給食業界では、新規顧客の獲得に時間と手間がかかりますが、自治体や医療・介護施設などが主要な顧客となるため、長期契約が多い傾向にあります。

そのため、M&Aにより、売り手企業が長年かけて築いてきた信用や契約関係、地域密着のサービス基盤をそのまま引継げるのは大きなメリットです。これにより、短期間での売上確保とシェア拡大が期待できるでしょう。

また、売り手の従業員を確保することで、人手不足の解消にもつながります。給食業界特有の専門性を持つ人材の確保は、事業継続において欠かせません。

給食業界のM&A事例

給食業界では、事業拡大や経営基盤強化を目的としたM&Aが活発に行われています。代表的な事例をいくつか見ていきましょう。

株式会社京進と株式会社リッチ

2019年4月、株式会社京進は株式会社リッチの発行済全株式を取得し、子会社化しました。

買い手となった京進は、学習塾、個別指導塾フランチャイズ、日本語教育、英会話、保育、介護、国際人材交流など多角的な事業を展開しています。一方、売り手となったリッチは、産業給食、食堂委託、園児給食などを手がけ、幕の内弁当やオードブルなども提供しています。

M&Aによりノウハウやリソースを共有することで、互いに相乗効果がうまれ、より高い事業展開が期待できるでしょう。

三井物産株式会社と北京健力源餐飲管理有限公司

2015年2月、三井物産株式会社は、中国で病院、学校などに向けて給食サービスを提供する北京健力源餐飲管理有限公司と、持分譲渡契約を締結しました。

これに伴い、新会社として北京三源餐飲管理有限公司が設立されています。三源社は、健力源社がこれまで培ってきたすべての事業を継承しました。

このM&Aでは、中国での給食事業の運営と、それに伴うノウハウの蓄積が期待されています。

株式会社トーカンと三給株式会社

2021年4月、セントラルフォレストグループ株式会社は、子会社である株式会社トーカンを通じて、三給株式会社の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

三給は、東海エリアで給食向け食品卸売事業を展開している企業です。その子会社である株式会社ヒカリは、スーパー惣菜向け食品卸売業を手がけています。

セントラルフォレストグループはこのM&Aにより、給食市場への参入と、中食・惣菜市場での売上拡大を図り、グループの企業価値向上を目指しています。

株式会社レパストと株式会社マシモ

2020年11月、給食受託および在宅配食事業を手がける株式会社レパストは、寿司や弁当の製造・販売を大手食品スーパーに展開する株式会社マシモをM&Aにより取得しました。これにより、レパストは中食産業への本格参入を果たしました。

レパストは、現在約750箇所におよぶ社員食堂、病院給食、学校給食などの給食受託事業を行っている企業です。加えて、「ストーク」ブランドによる在宅配食サービスを多角的に展開しています。同社はコロナ禍がもたらした食環境の劇的な変化に対応するため、既存事業である給食受託や在宅配食の付加価値向上を図りました。

このM&Aは、新たな成長領域として中食分野への参入を狙いとしたものです。

給食業界におけるM&A成功のポイント・注意点

給食業界のM&Aを成功させるためには、業界特有の要素を考慮することが欠かせません。ここでは、給食業界でのM&A成功のポイント・注意点を解説します。

セントラルキッチンと業務効率体制を確認する

給食業界では、多拠点への安定供給が前提となるため、セントラルキッチンの整備や運用が重要な評価ポイントです。M&Aにおけるデューデリジェンスでは、設備の老朽化状況、調理オペレーションの平準化、作業分担の合理性などを確認しましょう。

これらが不十分なまま統合を進めると、調理品質のばらつきや人員配置の非効率が表面化し、統合後の業務に支障をきたす可能性があるため、注意してください。

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品質・メニュー・衛生管理体制をチェックする

給食業界は、幼児から高齢者まで幅広い層に対応する必要があります。そのため、多種多様かつ高品質なメニュー提供体制が整っていることが大切です。

また、食物アレルギーや嚥下機能の制限など、きめ細やかな配慮も求められます。異物混入や食中毒といったリスクに対する衛生管理体制や、事故発生時の対応マニュアルの整備状況も、統合前に入念なチェックが不可欠です。

顧客・従業員など無形資産の引継ぎ体制を整える

給食業界では、顧客との長期契約や信頼関係、現場を担う従業員の熟練スキルやチーム体制といった無形資産が重要です。厨房施設が顧客側にあるケースも多く、有形資産以上に無形資産が事業の根幹を成しています。

そのため、M&A後のPMIでは、人間関係の維持や職場文化のすり合わせに十分な時間と配慮をかけることが肝心です。これが、事業継続と顧客離脱防止に寄与します。

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給食業界における今後のM&Aの課題と展望

給食業界では、高齢者施設や保育所の利用拡大、共働き世帯の増加を背景に、中長期的な需要の安定が見込まれています。一方で、原材料費やエネルギーコストの上昇、人材不足、厳格な衛生基準への対応など、構造的な課題も多いため、今後は戦略的なM&Aがさらに促進されるかもしれません。

また、在宅配食や中食領域との連携を見据えた多角化も進展し、業界全体の再編とサービス高度化が同時に進むことが期待できるでしょう。

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よくある質問

  • 給食業界でM&Aが増えている理由は何ですか?
  • 原材料費高騰と人材不足への対応として、食材調達コスト削減や人材・顧客基盤の確保を短期間で実現できる手段だからです。
  • デューデリジェンスで重視すべきポイントは?
  • セントラルキッチンの設備状態や衛生管理体制、品質管理マニュアルの運用状況を実地で確認することです。
  • PMIを円滑に進めるコツはありますか?
  • 顧客との長期契約や現場従業員のスキルを維持するため、無形資産の引継ぎ体制と職場文化の調整に時間をかけることが重要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長桑原 正樹
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
桑原 正樹

大手証券会社入社後、未上場企業・オーナー経営者の資産運用コンサルティングに従事。
2015年に当社入社後はM&Aアドバイザリーとして事業承継に関わる数多くの仲介実績を有する。

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