バー業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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新型コロナウイルスの影響を最も受けた業界の一つであるバー・居酒屋業界では、業界再編や新規参入を目的とするM&Aが活発に行われています。

本記事では、バー・居酒屋業界の市場規模やM&Aの動向などを整理したうえで、業界のM&A事例を紹介し、M&Aを活用するメリット、M&Aを成功させるためのポイント、今後の課題や展望などについて解説します。

M&Aの前に押さえておきたいバー・居酒屋業界の情報

M&Aについて解説するまえに、まずはバー・居酒屋業界の定義や、代表的な企業、そして業界ならではの特色などについて整理しておきましょう。

バー・居酒屋業界の定義

バーとは、カクテルやワイン、ビールなど、アルコールをメインに提供する飲食店のことです。一人で寛ぐ場所やデートに適した雰囲気などが楽しめます。近年では、音楽やアートのイベントを開催するバーも増え、単なるアルコール飲料を楽しむ空間にとどまらず、楽しみ方が多様化しています。

居酒屋も、アルコールとともに、それに合う料理を提供する形態の飲食店と定義する飲食店です。バーと比べると料理のバリエーションも広く、おつまみからご飯もの、さらにはデザートまで、実に幅広いメニューを楽しむことができます。

バーや居酒屋業界では激しい競争が常に行われており、オーナーはお酒や料理、価格設定や雰囲気作りに工夫を凝らし、来店客が楽しめるための空間を提供しています。

代表的な企業

バー・居酒屋業界で代表的な企業は、以下の通りです。

  • ・コロワイド:「ステーキ宮」「にぎりの徳兵衛」「かっぱ寿司」など
  • ・ワタミ:「焼肉の和民」「三代目鳥メロ」「かみむら牧場」など
  • ・モンテローザ:「魚民」「笑笑」「目利きの銀次」など
  • ・大庄:「庄や」「日本海庄や」「浜焼き海鮮居酒屋大庄水産」など

バー・居酒屋業界の特色

バーはカウンターバーやショットバーとも呼ばれ、カクテルなどの酒類を提供する店舗です。バーテンダーがカウンター越しに酒類の提供以外にも接客などを行います。顧客には固定客が多く、ボトルキープを行う店からホテルのメインバーのようなオーセンティックなバーまでさまざまです。

一方の、居酒屋業界は、かつては軒先に赤ちょうちんを出し、日本酒やビール、焼き鳥、おでんなどが提案メニューでしたが、1980年代にチェーン店タイプの居酒屋が登場して以降、イメージから大きく変わりました。

チェーン店タイプの居酒屋では、明るい店舗と接客、多様なメニューといったこれまでとは異なるサービスが提供された結果、学生や若いサラリーマン、女性を中心に受け入れられ、全国的にチェーン居酒屋ブームが広がりました。

その後1990年代に入ると内装や雰囲気にこだわったダイニングタイプの居酒屋が広がり、近年では特定の食材やお酒、食べ方にこだわった専門店タイプの居酒屋が注目を集めています。

バー・居酒屋業界のM&A動向・市場規模

次に、居酒屋やバー業界の市場規模を紹介したうえで、M&Aの動向について解説します。下図をご覧ください。

居酒屋やバー業界では、2007年をピークに売上高が低下をはじめ、コロナ禍の影響でさらに大きく下落しました。2021年以降は外食需要も回復のきざしを見せ、現在では回復傾向にあるものの、コロナ禍以前の水準には今のところまで到達していません。

日本フードサービス協会の調査によると、売上金額の減少は客単価の低下が主原因の一つではありますが、それ以上に利用客そのものの数が減少していることが関係しています。

これは、近年の健康意識の高まりや国内景気の縮小による節約志向、コロナ禍で定着した「家呑み」により、バーや居酒屋での飲酒は控え、自宅で飲酒を楽しむスタイルに多くの人が移行したことが背景にあると考えられるでしょう。

また、帝国データバンクの調査によると、2023年の「飲食店」の倒産は 768 件のうち204件は居酒屋となっています。コロナ禍の営業自粛や夜間営業停止の影響を受けた2020年の189 件を大きく上回っており、各社は厳しい状況に迫られていることが見受けられます。

パブレストラン、居酒屋 指数推移

参考:飲食関連産業の動向(FBI 2022年)

バー・居酒屋業界のM&A事例

次に、バー・居酒屋業界のM&A事例を紹介します。上述のようにバー・居酒屋業界では活発にM&Aが行われています。その中でも特に有名な事例が、以下の5つです。

チムニーとシーズライフ

2019年11月、チムニー株式会社は、シーズライフ株式会社の全株式を取得して完全子会社化することを発表しました。

チムニーは「はなの舞」「さかなや道場」などを中心に、全国で約700店舗を展開しています。一方のシーズライフは、関東圏で焼肉店10店舗と居酒屋1店舗を運営している会社です。

買い手であるチムニーは今回の買収により、自社の飲食店チェーンを拡大し、より多くのお客様に食の楽しさを提供することを目指しています。

レインズインターナショナルとアトム北海道

2020年3月、株式会社レインズインターナショナルは、子会社である株式会社アトム北海道の全株式を取得し、完全子会社化したことを発表しました。

レインズインターナショナルは、飲食店の経営やフランチャイズチェーン加盟店の募集などを行う会社です。一方のアトム北海道は、北海道で飲食店チェーンを運営する会社です。

今回の買収により、レインズインターナショナルは地域拠点を強化し、市場の拡大を目指します。

ダイナックホールディングスとSUNTORY U.S.A.,INC

2020年3月、株式会社ダイナックホールディングスは、RESTAURANT SUNTORY U.S.A., INC.の株式51%を取得し、子会社化したことを発表しました。

ダイナックホールディングスは、パブレストラン・バー・居酒屋を中心に、多様な飲食店を運営しており、多彩な飲食業態の創造に取り組んでいます。一方のSUNTORY U.S.A.,INCは、ハワイで高級和食レストラン「燦鳥」を運営する会社です。

今回の買収によってダイナックは、国際市場でのプレゼンスを今以上に拡大させていくことを目指します。

海帆とSSS

2022年7月、株式会社海帆は、株式会社SSSを子会社化したことを発表しました。

海帆は、さまざまな形態の飲食チェーンや居酒屋などを運営しています。売り手となったSSSも、居酒屋を運営する会社です。株式譲渡による買収規模は6億3,000万円となりました。

今回のM&Aでは、両社が有するノウハウや経営資源の融合により、コストの削減や、オペレーションの合理化を図り、企業価値の向上を目指します。

鳥貴族ホールディングスとダイキチシステム

2023年1月、株式会社鳥貴族ホールディングスは、ダイキチシステム株式会社を子会社化しました。

鳥貴族ホールディングスは、「焼鳥屋 鳥貴族」をはじめさまざまな業態の居酒屋チェーンなどを手掛けています。一方のダイキチシステムは、「やきとり大吉」のフランチャイズ店舗を経営する会社です。

鳥貴族ホールディングスはダイキチシステム株式会社を傘下に迎えることで、国内市場でのシェアの強化およびグループ全体の経営力向上を図ります。

バー・居酒屋業界でM&Aを活用するメリット

居酒屋やバー業界でM&Aを活用する主なメリットとしては、以下が挙げられます。

  • ・提供するメニューの幅が広がる
  • ・バーテンダー・スタッフや設備を獲得できる

それぞれ見ていきましょう。

提供するメニューの幅が広がる

居酒屋やバー業界でM&Aを行うと、買収先企業は提供するアルコールや料理などのラインナップを拡充することができます。

例えば、ビアホールがカクテルバーを買収することでアルコールメニューの増加や質の高いアルコールの仕入れが可能になったり、食事に強みを持つ居酒屋を買収して食事需要を取り込んだりすることができるでしょう。

また、経営規模の拡大することで一括仕入れが可能となり、スケールメリットを活かした仕入コストの削減につながるほか、相手企業の有する独自の仕入ルートの活用によるメニュー・サービスの質の向上なども期待できます。

バーテンダー・スタッフや設備を獲得できる

M&Aを活用すると、バーテンダーや調理スタッフ、接客スタッフなど優秀な人材や設備の承継ができるため、市場競争力の向上が望めます。

特に、バーや居酒屋の顧客は、バーテンダーや接客スタッフの人柄やサービスの良さに惹かれてリピーターになるケースがあります。そのため、優秀かつ有名な人材を獲得することは、利用客獲得に苦戦しているバー・居酒屋業界において大きなメリットになるといえるでしょう。

さらに、キッチンやビアサーバーなどの設備については、売り手の設備を上手に活用することで、設備投資コストを抑えながらサービスの拡充を図ることが可能です。

バー・居酒屋業界におけるM&A成功のポイント

次に、居酒屋やバー業界でM&Aを行う場合、押さえておくべき成功のポイントを2つ紹介します。

従業員の労働状況を確認する

居酒屋、バー業界のM&Aを検討する際には、相手企業の従業員の労働状況を確認することが大切です。

居酒屋、バー業界が属する飲食業界では、規定を超えての長時間労働や、割増賃金の未払い問題などが慢性化しており、こうした企業は後を絶ちません。

仮に相手企業が従業員に対して過重労働や無銭労働を強いていたことがM&A実施後に発覚した場合、トラブルに発展するリスクが高くなります。

最悪の場合、訴訟問題に発展するリスクもあるため、労働環境に問題はないか、従業員たちが不安や不満を抱えながら働いていないかを、あらかじめしっかりリサーチしておくことが非常に大切です。

賃貸借契約を確認する

店舗の賃貸借契約や取引先との契約状況の確認も、居酒屋やバー業界でM&Aを行う際にはチェックすべきポイントの一つです。

例えば、買収後に店舗をそのまま継承することを期待してM&Aに踏み切った結果、実施前に売り手側の賃貸借契約が切れてしまうようなケースが考えられます。

また反対に、店舗の移転を視野に入れていたにもかかわらず、契約条項に途中解約が含まれていたため、元の店舗での営業をせざるを得ない可能性も考えられます。

特に、定期賃貸借契約をしていた場合は契約期間が明確に定められており、原則として途中契約が認められていません。したがって、売り手企業がどのような条項で契約しているのか、また変更は受け入れられるかなどを、契約書を詳細に読み込んで事前に確認しておくことが大切です。

バー・居酒屋業界における今後のM&Aの課題と展望

居酒屋やバー業界は、長年安定した市場を維持してきましたが、近年はさまざまな課題に直面しています。

人件費や原材料費の高騰により経営コストは増大し、また酒類販売規制や飲酒運転罰則の強化への対応も求められています。

加えて、健康志向の高まりや若者の飲酒離れといった消費者嗜好の変化にも、柔軟に対応していかなければなりません。

このように課題が多い中で、利用客を取り込んでさまざまなニーズに対応していくためには、DXの促進によるテクノロジーを活用した顧客体験の向上や、栄養バランスやアレルギーに配慮したメニューの提供など、サービスの変革も求められます。

同業種や食品製造業、アルコール製造業など隣接する業種に限らず、異業種までを視野に入れたM&Aが、今後バー・居酒屋業界で生き残るための大切な手段になると考えられます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長桑原 正樹
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
桑原 正樹

大手証券会社入社後、未上場企業・オーナー経営者の資産運用コンサルティングに従事。
2015年に当社入社後はM&Aアドバイザリーとして事業承継に関わる数多くの仲介実績を有する。

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