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カフェ業界では、市場の多様化と消費者ニーズの変化により、新しいビジネスチャンスを求める企業が増え、M&Aが活発化しています。
本記事では、カフェ業界の市場動向や、具体的なM&A事例を詳しく紹介します。M&Aを成功させるためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
M&Aの前に押さえておきたいカフェ(喫茶店)業界の情報
近年のカフェ業界は、変化する市場に対応するために、さまざまな戦略が実施されています。まずは、カフェ業界の企業や代表的な企業、特色などについて見ていきましょう。
カフェ(喫茶店)業界の定義
カフェとは、飲み物やスイーツ、軽食を提供する店舗のことを指します。元々、カフェの営業には「喫茶店営業許可」が必要でしたが、2021年の法改正によりこの許可が廃止され、以降は飲食店と同様の「飲食店営業許可」が必要になりました。この変更により、喫茶店を営業するための条件は従来よりも厳しくなっています。その一方で、軽食だけでなく、本格的なフードメニューの提供が可能となり、サービスの多様化が進んでいます。
代表的な企業
以下は、カフェ業界でも、特に知名度の高い企業です。
- ・スターバックスコーヒージャパン株式会社
- ・株式会社ドトールコーヒー
- ・株式会社コメダ
- ・株式会社プロントコーポレーション
カフェ業界の特色
1980年代に日本国内で誕生したセルフサービス型カフェは、1990年代に市場に参入した外資系セルフ型カフェと共に、日本のカフェスタイルとして定着しました。市場シェアは、外資系チェーン店やフランチャイズのカフェが大きな割合を占めています。
一方で、個人経営のカフェは、コーヒー豆の種類にこだわる店や動物とのふれあいを楽しめる店、特定のコンセプトに特化した店など、サービス形態が多様化していることが特徴です。
市場競争は激化する傾向にありますが、SNSを活用した宣伝や、魅力的なコンセプト、メニューなどを効果的に打ち出せれば、人気を集める可能性は十分にあるといえるでしょう。
カフェ業界の市場規模・動向
カフェ業界は、2020年にはコロナウイルスの流行による外出自粛で前年度比売上高69%と大きく減少しました。しかし、2021年以降、モバイルオーダーやフードデリバリーの導入により、業績の回復を果たしています。2023年には売上高前年度比120.6%に到達し、これは飲食業界全体を上回る伸びです。この伸び率の背景には、特定のコンセプトに特化したカフェの増加があると考えられます。

ただし、店舗数前年比を見ると、大幅な増減は無くほぼ横ばいであり、新規開業と廃業が拮抗している状況です。カフェ業界はニーズも広く、成功のチャンスも大いにある一方で、課題をしっかりと分析し、トレンドに合ったコンセプトとビジネスモデルの構築が必要といえるでしょう。

カフェ業界のM&A事例
カフェ業界では多くのM&Aが実施されており、これらの事例は業界内での競争力強化や市場拡大のための戦略として活用されています。ここでは、近年の代表的な事例を5件見ていきましょう。
シャノアールと珈琲館
2021年4月、「カフェ・ベローチェ」を展開する株式会社シャノアールは、珈琲館株式会社との合併を発表しました。両社の経営資源と事業は、新設会社C-United株式会社が継承します。50年以上にわたって培ったコーヒービジネスのブランド力や技術力を融合させることで、さらなる企業価値の向上と新たなコーヒー文化の創出を目指しています。
カフェと京阪レストラン
2021年12月、京阪ホールディングス株式会社の完全子会社である株式会社カフェは、同じく京阪HDの完全子会社である株式会社京阪レストランから飲食事業を承継しました。京阪HDグループの飲食事業の成長と効率化を図ることが目的です。事業承継後の店舗合計数は35店舗と拡大し、さらなる精進を続けています。
ロート製薬とカフェ・カンパニー
2021年8月、ロート製薬株式会社は、飲食店舗企画運営事業を行うカフェ・カンパニー株式会社と資本業務提携を実施しました。ロート製薬は、機能性食品やサプリメントの製造販売を行いながら、カフェカンパニーの「食を通じたコミュニティの創造」という企業理念と連携して、心身の健康をサポートする新たな価値を提供しています。
WDIとちんや
2021年8月、「ハードロックカフェ」を展開する株式会社WDIは、老舗すき焼きブランド「ちんや」の暖簾を、2021年8月に承継しました。ちんやは、コロナ禍や店舗の老朽化などにより一時休業が決まっていました。このM&Aによって、WDIはちんやのブランドと歴史を保護するとともに、自社の経験と融合させ、ブランド力の向上と事業拡大を目指しています。
サンマルクホールディングスと倉敷珈琲
2024年1月、サンマルクホールディングスは、子会社である株式会社倉式珈琲を吸収合併しました。フルサービス喫茶業態の難しさに直面していた倉敷珈琲は、事業戦略の再構築の必要性に迫られている状態でした。サンマルクHD内で事業を継続し、潜在的な可能性を追及しています。
カフェ業界でM&Aを活用するメリット
カフェ業界のM&AでM&Aを活用する主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- ・カフェ業界への新規参入ハードルが低くなる
- ・既存事業とのシナジー効果を見込める
それぞれ見ていきましょう。
カフェ業界への新規参入ハードルが低くなる
M&Aを利用して既存のカフェを買収すれば、市場への新規参入が容易になります。売り手企業の店舗と従業員をそのまま獲得できるため、事業や人材の成長に必要な時間もコスト削減できるでしょう。さらに、株式譲渡を通じて開業に必要な手続きや権利も引き継げるため、事業の早期収益化と規模拡大がスムーズに行えます。
既存事業とのシナジー効果を見込める
M&Aは、既存事業とのシナジー効果を生むメリットがあります。カフェ業界はニーズが多様化しており、市場のトレンドやニーズの変化を踏まえた新しいビジネスモデルの構築が必要です。M&Aにより、異なる事業領域の強みをかけ合わせることで、市場になかった新たなサービスを提供できるでしょう。特に、ホテルや観光業、農畜産業、食品加工業など、カフェ業界と親和性の高い事業を展開している企業との組み合わせは、双方の事業強化につながる可能性があります。
カフェ業界におけるM&A成功のポイント
カフェ業界のM&A成功には、適切な準備と詳細な分析が必要です。ここでは、カフェ業界のM&Aを成功させるためのポイントを見ていきましょう。
計画的な準備が必要
カフェの譲渡を検討する際、売り手は賃貸契約の譲渡可否や解除に必要な予告期間などの契約内容を確認し、余裕を持ったスケジュールで準備計画を立てることが重要です。
賃貸の解約期日が決定してしまうと、売り手は売却の実行を迫られてしまい、交渉時に適切な判断ができない可能性があります。特に、解約予告を受けた家主がテナント募集を開始して次の借り手を探し始めた場合、交渉時に不利な条件を提示されるリスクもあるため、解約予告は交渉が十分に進んでから行ったほうが良いでしょう。
ただし、相手が見つからない場合に解約時期を伸ばすと、その分賃料がかかり、経済状態を圧迫しかねません。M&Aの進捗状況と資金状況を考慮し、適切なタイミングでの解約予告や解約を行うことが必要です。
カフェの価値をしっかりと分析する
競争が激化するカフェ業界においては、M&Aを検討する際にも、対象企業の価値のしっかりとした分析が求められます。
その際には、店舗の立地や人材、口コミを含むブランド価値など、多彩な角度から対象企業の将来的な収益力を見極めることが必要です。
また、特定の従業員やスタッフにファンがついていたり、カフェオーナーの手料理や雰囲気に魅力を感じて通っていたりといった、カフェ業界ならではの性質も理解しておく必要があるでしょう。従業員やお客さんの同意を得ずにM&Aを推し進めてしまうと、たとえ買収が成立しても、顧客が離れてしまう可能性があります。
売却後も引継期間を設け、経営ノウハウをマニュアルとして引き継いでもらうこと、集客力の高いスタッフに就業継続の同意を得るなど、事業遂行のために売り手への交渉を行うことなどが大切です。
カフェ業界における今後のM&Aの課題と展望
カフェ業界では、参入障壁の低さから生じる激しい競争が大きな課題です。同業種内での競争だけでなく、コンビニエンスストア、ファストフード店、自動販売機とも顧客を奪い合う状況にあり、常に競争は激化しています。さらに、厚生労働省のデータによると、2008年から2021年の間に約9万件のカフェが廃業している点も留意しておきましょう。
このような市場環境のなかで「選ばれるカフェ」になるためには、消費者の多様化するニーズに応える魅力的なメニューや独自のコンセプトの開発が必要です。同じカフェ業界内でのノウハウや経験を持つ企業や、異業種とのM&Aを通じて革新的なメニューやサービスの創出が一つの有効な手段となります。
業界内の激しい競争のなかで生き残りを図るため、カフェ業界のM&Aは今後も増加する見込みです。
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