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通信工事業界では、5Gインフラ整備や光回線の普及などにより設備需要が堅調に推移しています。しかし、深刻な人材不足や高齢化といった課題も抱えています。こうした状況を背景に、人材確保や施工エリア拡大を目的としたM&Aが活発化しています。
本記事では、通信工事業界のM&A動向や、M&A活用のメリット、具体的な事例、成功のポイントまで詳しく解説します。
通信工事業界の概要
通信工事業界は、情報通信技術の発展と共に成長を続けており、現代社会のインフラ整備における重要な役割を果たしています。ここでは、通信工事業界の定義や特色について紹介します。
通信工事業界の定義
通信工事業界とは、建物などの施設で使用されているテレビ、電話、インターネットなどの情報通信に関するシステムの構築や、メンテナンス工事を行う会社のことを指します。データ通信設備や情報処理収集設備の工事なども、通信工事に含まれます。
通信工事には「電気工事」と「電気通信工事」の2種類があり、国土交通省の定めによれば、それぞれの建設工事の内容は以下のとおりです。
- 電気工事
- 発電設備・受変電設備・配送電設備・構内電気設備等を設置する工事
- 電気通信工事
- 有線電気通信設備・無線電気通信設備・放送機械設備・データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事
通信工事業界の特色
通信工事業界は、通信技術の発展に伴い成長を続けていますが、通信会社の設備投資関連の動向によって大きく左右される傾向があります。特に、NTTなどの大手通信企業の影響を受けやすいのが特徴です。
また、2016年に無電柱化推進法が成立したことにより、今後は埋設工事への投資が拡大することが予定されています。これにより、通信工事を行う企業が扱う埋設工事の需要が増加するでしょう。通信工事業界は、このような法改正の影響も受けながら、引き続き発展していくことが期待されています。
通信工事業界のM&A動向・市場規模
「建設工事施工統計調査報告」によると、電気通信工事業界の令和5年度の完成工事高は、3兆3,928億円となり、前年度と比べてマイナス5.2%となりました。特に下請完成工事高がマイナス18.3%と大きく落ち込んでいます。一方で、5Gインフラや光回線、クラウド環境の整備など通信設備への需要自体は底堅く推移している状況です。業界全体としては高齢化・人材不足の深刻化や、受注構造の変化により、成長の勢いは鈍化傾向にあります。
こうした状況を背景に、人材確保や施工エリア拡大を目的としたM&Aも顕著です。スケールメリットの追求や元請化シフト、異業種(IT・DX事業者など)による買収事例もあり、事業基盤の強化が図られています。
通信工事業界でM&Aを活用するメリット
通信工事業界におけるM&Aは、人材確保や事業拡大の面で大きな効果をもたらします。主なメリットは以下の3つです。
専門知識のある人材を確保できる
他業界と同様、通信工事業界でも人材不足が深刻化しています。M&Aにより売り手企業が有する人材を取り込むことができれば、人材不足の解消が可能です。
特に、実務経験のある人材をそのまま確保できれば、従業員を育成する時間とコストを短縮できます。また、電気工事士や施工管理技士などの有資格者が多くいる企業を買収できれば、顧客からの信頼も獲得できるでしょう。
また、経験豊富な人材を多く揃えれば、教育基盤の強化も可能です。これにより、新たに採用した未経験の人材が、現場で活躍できるようになるまでの期間を短縮できます。
新規参入のコストが抑えられる
M&Aで通信工事業者を買収すれば、新規事業への参入コストを抑えることができます。
電気通信工事業を行うために必要な建設業許可を取得するためには、管理責任者の要件を満たす人材の確保や、書類作成、申請といった、煩雑なプロセスを経なくてはなりません。これには多くの時間とコストがかかります。
しかし、既に許可を保有し、必要な人材や設備を備えた企業を買収すれば、これらのプロセスを省略でき、即座に事業をスタートすることが可能です。
特に、人材不足となっている通信工事業界では許認可の取得や新規参入のハードルが高いため、M&Aによって早期に基盤を整えられるのは大きなメリットです。
景気変動のリスクを減らせる
通信工事業界を含む電気工事業界は、公共投資や民間設備投資の影響を受けやすく、景気の波に左右されがちです。そこで、景気に左右されにくい他業種の企業をM&Aで買収すれば、収益源の分散や経済変動リスクの低減が図れます。
景気に左右されにくく、なおかつ電気工事業とのシナジー効果が期待できる売り手を見つけることができれば、より理想的です。例えば、空調・セキュリティ施工などが挙げられるでしょう。
通信工事業界のM&A事例
通信工事業界では、事業拡大や地域進出を目的に、多様なM&Aが実施されています。
JESCOホールディングス株式会社と阿久澤電機株式会社
JESCOホールディングス株式会社は、2022年9月、阿久澤電機株式会社を完全子会社としました。JESCOホールディングス株式会社は、電気・無線通信工事などを手がける会社であり、阿久澤電機株式会社は電気・電気通信工事を事業としている会社です。このM&Aにより、群馬県全体と近隣県の営業展開の強化と人材交流、さらにはシナジー効果を目指しています。
株式会社アウトソーシングテクノロジーと株式会社アイテック
株式会社アウトソーシングテクノロジーは、株式会社アイテックの発行済全株式を2021年2月に取得し、子会社化しました。株式会社アウトソーシングテクノロジーはエンジニアの派遣事業とシステム開発などを行っている会社であり、株式会社アイテックは電気通信工事や建柱工事などを中心に事業を行っている会社です。この子会社化により、技術者や教育リソース、顧客基盤のシナジー効果によって、事業成長を目指しています。
コムシスホールディングス株式会社と朝日設備工業株式会社
コムシスホールディングス株式会社は、朝日設備工業株式会社と簡易株式交換による完全子会社化を2020年10月に行ないました。コムシスホールディングス株式会社は、情報通信工事事業や電気設備工事事業などを事業として行っている会社であり、朝日設備工業株式会社は、管工事および水道施設工事を中心に事業を行っている会社です。東海地方を中心に、両者の強みを生かした事業展開と、経営資源の連携によるシナジー効果を目指します。
株式会社TTKと塚田電気工事株式会社
株式会社TTKは、塚田電気工事株式会社を、株式交換によって2018年12月に完全子会社化しました。株式会社TTKは情報通信設備工事が主力事業であり、他にも環境土木工事事業や電気工事事業を行っています。塚田電気工事株式会社は一般電気工事や電気通信工事を行っている会社です。この子会社化によって、電気工事事業の拡大を目指します。
エア・ウォーター株式会社と株式会社丸電三浦電機
エア・ウォーター株式会社は、株式会社丸電三浦電機の全株式を取得して、2018年7月に完全子会社化しました。エア・ウォーター株式会社は産業ガス関連事業などを行っている会社であり、株式会社丸電三浦電機は電気設備工事や情報通信工事などを行う会社です。この子会社化により、従来よりも広範囲な領域での各種設備工事の受注が可能となり、シナジー効果も見込めます。
北陸電気工事株式会社と株式会社日建
2023年11月、北陸電気工事株式会社は取締役会で株式会社日建の全株式を取得し、子会社化することを決議しました。
買い手となった北陸電気工事株式会社は、北陸地方を中心とする電気・管・配電設備工事を主事業とする企業です。売り手となった株式会社日建は神奈川県横浜市に拠点を置く会社で、空調・給排水管工事を主軸とし、電気工事も手がけてきました。
このM&Aにおける北陸電気工事株式会社の狙いは、首都圏への商圏拡大と、設備工事分野の強化です。株式会社日建の経営インフラや施工ノウハウ、若い技術者を取り込むことで、関東地区における事業基盤の拡大と収益拡大を目指しています。
通信工事業界におけるM&A成功のポイント・注意点
通信工事業界のM&Aでは、業界特有の要素を十分に考慮した対策が成功の鍵となります。ここでは、M&A成功のポイントを2つご紹介します。
人的資源と信頼関係の引き継ぎを丁寧に行う
通信工事業界は、現場ごとの対応力が求められるため、有資格者や熟練技術者の継続雇用が工事品質に直結します。
特に、電気通信工事施工管理技士や電気工事士など、特定資格を持つ人材の離職は、事業継続に関わるリスクです。そのため、引き継ぎ期間の確保やインセンティブ設計を通じた定着支援が欠かせません。
また、地域密着型の中小事業者では、従業員や取引先との信頼関係も重要な経営資源となります。M&Aにより経営体制が変わる際は、何が変わり、何が変わらないかを明確に伝えることが大切です。
統合後には組織体制や評価制度、文化のすり合わせといったPMIの設計・実行を丁寧に行うことで、人的資源と信頼関係の円滑な承継が期待できます。
許認可・建設業法関連の承継手続きを適切に行う
通信工事に必要な建設業許可は、原則として法人ごとに付与されます。M&A後にスムーズな事業継続を行うには、許可の承継や新規取得の準備が不可欠です。特に経営業務管理責任者や専任技術者の退職が予定されている場合には、代替人材の確保が急務となるでしょう。
また、下請けとして大手元請企業と契約しているケースでは、M&Aにより契約解除のリスクもあるため、主要取引先との関係性や契約内容の事前確認も欠かせません。トラブル防止を防ぐため、デューデリジェンスの段階で、建設業許可の有無・更新状況、専任技術者の在籍状況、取引先との契約条件などを丁寧に精査しましょう。
通信工事業界における今後のM&Aの課題と展望
通信工事業界では、5Gインフラやクラウド環境の整備といった通信設備の需要が底堅く推移しています。一方で、従業員の高齢化や技術者不足といった課題が顕在化している状況です。これらの背景から、事業承継や人材確保を目的としたM&Aは、今後さらに加速すると見込まれます。
M&Aを成功させるためには、買収後の工事品質維持や許認可の承継、主要取引先との関係継続といった対応が不可欠です。加えて、属人的なノウハウが多い業種であるため、引き継ぎやPMIの設計がM&Aの成否を左右します。そのため、業界に精通した専門家と連携しながら、売却・買収の実績や動向を踏まえて慎重に検討を進めることが重要です。
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よくある質問
- 通信工事業界とはどのような業界ですか?
- 通信工事業界は、テレビ、電話、インターネットなどの情報通信システムの構築やメンテナンスを行う業界で、電気工事と電気通信工事に分類されます。データ通信設備や情報処理設備の工事を手がけ、社会インフラの基盤を支えています。
- なぜ通信工事業界でM&Aが増えているのですか?
- 通信工事業界は人材不足や高齢化が深刻であり、許認可取得のハードルも高いため、人材確保や事業拡大を目的としたM&Aが活発化しています。また、5Gインフラ整備や光回線普及に伴う設備需要は底堅く、成長戦略の一環としてM&Aが有効とされているためです。
- 通信工事業界のM&Aにはどんなメリットがありますか?
- 主なメリットは、専門知識のある人材確保、新規参入コスト抑制、そして景気変動リスクの分散です。M&Aにより有資格者や熟練技術者を獲得できるほか、建設業許可を持つ企業を買収すれば許認可の取得手続きが省略可能となります。

