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通信工事業界では、技術革新や人材不足への対応、事業拡大などを目的としたM&Aが活発化しています。
ここでは、通信工事業界におけるM&Aの最新動向や主要事例、M&Aを活用するメリット、成功のポイントなどを詳しく解説します。M&Aを検討中の方は、今後の方針を取り決めるうえでの参考にしてください。
M&Aの前に押さえておきたい通信工事業界の情報
通信工事業界は、情報通信技術の発展に伴い成長を続けており、M&Aの動きも活発化しています。まずはじめに、業界の定義や、代表的な企業、特色などについて押さえておきましょう。
通信工事業界の定義
通信工事業界とは、建物などの施設で使用されているテレビ、電話、インターネットなどの情報通信に関するシステムの構築や、メンテナンス工事を行う会社のことを指します。データ通信設備や情報処理収集設備の工事なども、通信工事に含まれます。
通信工事には「電気工事」と「電気通信工事」の2種類があり、国土交通省の定めによれば、それぞれの建設工事の内容は以下のとおりです。
- ■ 電気工事……発電設備・受変電設備・配送電設備・構内電気設備等を設置する工事
- ■ 電気通信工事……有線電気通信設備・無線電気通信設備・放送機械設備・データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事
代表的な企業
通信工事業界で代表的な企業としては、以下のような会社が挙げられます。
- ・コムシスホールディングス株式会社
- ・株式会社ミライト・ホールディングス
- ・株式会社協和エクシオ
これらの企業は、長年にわたり通信インフラの構築や保守に携わり、高い技術力と豊富な実績を有しています。また、通信工事業界におけるM&Aにも積極的に取り組み、事業拡大を図っています。
通信工事業界の特色
通信工事業界は、通信技術の発展に伴い成長を続けていますが、通信会社の設備投資関連の動向によって大きく左右される傾向があります。特に、NTTなどの大手通信企業の影響を受けやすいのが特徴です。
また、2016年に無電柱化推進法が成立したことにより、今後は埋設工事への投資が拡大することが予定されています。これにより、通信工事を行う企業が扱う埋設工事の需要が増加するでしょう。通信工事業界は、このような法改正の影響も受けながら、引き続き発展していくことが期待されています。
通信工事業界の市場規模・動向
電気通信工事業界の令和4年度の完成工事高は、3兆5,794億3,300万円に達し、前年度と比べて4%の増加率を示しています。都市圏を中心とした再開発や、頻発する災害の復旧による建設需要の高まりと共に、通信工事市場の需要も伸びると予測されています。
一方で、通信工事業では技術者不足が深刻な問題となっており、需要はあるものの大幅な市場拡大はあまり見込めないのが現状です。

参考:建設工事受注動態統計調査、建設工事施工統計調査
通信工事業界のM&A事例
通信工事業界では、近年M&Aが活発化しています。事業拡大や人材確保、シナジー効果を目的とした事例が多く見られます。ここでは、主要なM&Aの事例をご紹介します。
JESCOホールディングスと阿久澤電機
JESCOホールディングス株式会社は、2022年9月、阿久澤電機株式会社を完全子会社としました。JESCOホールディングスは、電気・無線通信工事などを手がける会社であり、阿久澤電機は電気・電気通信工事を事業としている会社です。この子会社化により、群馬県全体と近隣県の営業展開の強化と人材交流、さらにはシナジー効果を目指しています。
アウトソーシングとアイテック
株式会社アウトソーシングは、株式会社アイテックの発行済全株式を2021年2月に取得し、子会社化しました。アウトソーシングはエンジニアの派遣事業とシステム開発などを行なっている会社であり、アイテックは電気通信工事や建柱工事などを中心に事業を行なっている会社です。この子会社化により、技術者や教育リソース、顧客基盤のシナジー効果によって、事業成長を目指しています。
コムシスホールディングスと朝日設備工業
コムシスホールディングス株式会社は、朝日設備工業株式会社と簡易株式交換による完全子会社化を2020年10月に行ないました。コムシスホールディングスは、情報通信工事事業や電気設備工事事業などを事業として行なっている会社であり、朝日設備工業は、管工事および水道施設工事を中心に事業を行なっている会社です。東海地方を中心に、両者の強みを生かした事業展開と、経営資源の連携によるシナジー効果を目指します。
TTKと塚田電気工事
株式会社TTKは、塚田電気工事株式会社を、株式交換によって2018年12月に完全子会社化しました。TTKは情報通信設備工事が主力事業であり、他にも環境土木工事事業や電気工事事業を行なっています。塚田電気工事は一般電気工事や電気通信工事を行なっている会社です。この子会社化によって、電気工事事業の拡大を目指します。
エア・ウォーターと丸電三浦電機
エア・ウォーター株式会社は、株式会社丸電三浦電機の全株式を取得して、2018年7月に完全子会社化しました。エア・ウォーターは産業ガス関連事業などを行なっている会社であり、丸電三浦電機は電気設備工事や情報通信工事などを行う会社です。この子会社化により、従来よりも広範囲な領域での各種設備工事の受注が可能となり、シナジー効果も見込めます。
通信工事業界でM&Aを活用するメリット
通信工事業界でM&Aを活用する主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- ・専門知識のある人材を確保できる
- ・新規参入のコストが抑えられる
それぞれ見ていきましょう。
専門知識のある人材を確保できる
通信工事業界でも人材不足が深刻化しており、特に専門知識を持っている人材は少ない状況です。人材不足を解消するために、M&Aを実施する企業も増えています。M&Aにより専門知識のある人材を確保できれば、従業員を育成する時間とコストを短縮することができます。
新規参入のコストが抑えられる
M&Aで通信工事業者を買収すれば、新規事業への参入コストを抑えることができます。電気通信工事業を行うにあたっては、建設業許可の取得が必要となります。M&Aによって、これらの許可の取得にかかる時間やコストを削減できるのです。
通信工事業界におけるM&A成功のポイント
通信工事業界では人材不足が深刻化しており、有資格者を雇うためにM&Aを行なっても、その後に辞めてしまう可能性があります。予期せぬ人材流出を防ぐためには、M&A後の統合プロセスをしっかりと行うことが重要です。
また、魅力的な取引先を多く抱えている企業を買収することで、事業拡大がしやすくなります。買収先企業の取引先や顧客基盤を活用することで、新たな事業機会の創出や売上拡大が期待できるでしょう。
通信工事業界における今後のM&Aの課題と展望
通信工事業界の多くの企業が、人手不足や従業員の高齢化に悩まされています。後継者問題や人材不足を解決するために、M&Aが積極的に行なわれており、今後もその傾向は続く見込みです。
また、関連する業界にいる企業のM&Aだけでなく、新規事業で異業種から参入する企業のM&Aも増加傾向にあります。さらに、国内需要の低下を見越して、海外でのM&Aを実施している企業もあります。
今後も、人材確保や事業拡大、グローバル展開などを目的としたM&Aは活発に行われるでしょう。通信工事業界の企業は、自社の経営課題やニーズに合わせて、適切なM&A戦略を策定・実行することが求められます。
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