建設コンサル 業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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建設コンサル業界では、インフラの老朽化や防災需要の高まりに伴い、M&Aが活発化しています。建設コンサルは、社会資本整備における設計や計画の重要性が増している昨今において、重要な役割を担います。本記事では、建設コンサル業界の市場動向やM&A事例、成功するためのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

M&Aの前に押さえておきたい建設コンサル業界の情報

まずは、業界の定義や特色、代表的な企業など、建設コンサル業界の基本的な情報について紹介していきます。

建設コンサル業界の定義

建設コンサルタントは、道路、水道、鉄道などの社会資本プロジェクトにおいて、技術コンサルティングを提供します。国や地方自治体などによる公共事業を主に取り扱うことも特徴です。技術コンサルとは、案件を受注すると、調査や打ち合わせを重ねたうえで、設計・分析・解析事項を報告書や図面としてまとめることなどを指します。

代表的な企業

建設コンサル業界の代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • ・日本工営株式会社
  • ・パシフィックコンサルタンツ株式会社
  • ・株式会社 建設技術研究所
  • ・株式会社オリエンタルコンサルタンツ

建設コンサル業界の特色

国や自治体のパートナーとして、地域の安全かつスムーズな社会資本整備を推進するのが、建設コンサルタントの役割です。

ゼネコンやメーカーは、建設コンサルタントが作成した設計をもとに施工を進めていきます。そのため、建設コンサルタントの成果が、そのまま建設物の品質に影響するといえるでしょう。

特に近年は、都市や情報の高度化・多様化により、建設コンサルタントの役割は一層重要になっており、よりハイレベルなスキルが求められています。

建設コンサル業界の市場規模・動向市場規模

厚生労働省の建設関連業等の動態統計調査によると、建設コンサルタント企業50社の2023年度の契約金額は6,859億6,600万円で、前年度比1.09%増となりました。年度によっては多少の増減はありますが、全体として市場は拡大傾向です。

建設コンサルタント業界が好調な理由は、インフラの老朽化と防災需要の高まりにあります。日本全土でインフラ整備の需要が増加しており、社会インフラの老朽化率は今後さらに上昇することが見込まれます。頻発する自然災害に対応するため、防災や減災の取り組みが強化されており、建設コンサルタント業界の売上高は今後も堅調に推移する見通しです。

建設コンサルタント 50社 契約金額

参考:建設関連業等の動態統計調査

建設コンサル業界のM&A事例

建設コンサル業界におけるM&Aの成功事例として、5件紹介します。

応用地質とOYOインターナショナル

2020年12月、応用地質株式会社は、連結子会社であるOYOインターナショナル株式会社を吸収合併することを発表しました。海外拠点を持つOYOインターナショナルとの吸収合併により、効率的に海外事業展開を図ることが狙いです。

川崎地質とユニオン・コンサルタント

2022年12月、川崎地質株式会社は、株式会社ユニオン・コンサルタントの株式を取得し、子会社化すると発表しました。北海道に経営基盤を持つユニオン・コンサルタントの子会社化により、中期経営計画方針で掲げている「事業領域の拡大」を実現する狙いです。

メイホーホールディングスと安芸建設コンサルタント

2022年7月、株式会社メイホーホールディングスは、建設コンサルタント企業である株式会社安芸建設コンサルタントの全株式を取得し、子会社化を実施しました。広島地方で事業展開する安芸建設コンサルタントを取り込むことで、日本国内の事業エリア拡大とシェア確立を狙う目的です。

メイホーエクステックと三川土建

2022年12月、株式会社メイホーホールディングス傘下である、株式会社メイホーエクステックは、株式会社三河土建の株式を取得し、子会社化しました。三川土建は、建設コンサルをはじめ、介護・建設・人材派遣・グローバル人材教育を展開するメイホーグループ傘下に入ることで、自社の人材不足解決の糸口をつかむと共に、バックオフィスのサポートを期待しています。

オリエンタル白石と山木工業ホールディングス

2020年12月、OSJBホールディングスは、連結子会社であるオリエンタル白石株式会社が、山木工業ホールディングス株式会社の株式を取得し、子会社化することを発表しました。OSJBホールディングスグループは中期経営計画に東北地域の事業基盤強化と湾岸関連事業の展開を掲げており、山木工業ホールディングスグループが有する福島県いわき市での工事実績を活用しながら、計画目標の実現を目指しています。

建設コンサル業界でM&Aを活用するメリット

建設コンサル業界でM&Aを行う主なメリットとして、以下の2点を紹介します。

  • ・技術者など即戦力の確保につながる
  • ・業界内シェアが拡大する

それぞれ見ていきましょう。

技術者など即戦力の確保につながる

建設コンサル業界でM&Aを実施する大きなメリットは、人員の確保ができる点です。売り手企業で働く経験豊富な技術者を取り込むことで、即戦力として自社事業への貢献が期待できます。新入社員を一から教育する必要も無く、技術者が増えることで作業分担が可能になり、労働環境の改善にもつながるでしょう。

業界内シェアが拡大する

企業規模が大きくなると請け負える業務の量も増えるため、業界内でのシェア拡大が期待できます。また、公共事業では、経営規模や経営状況に応じた等級によって入札できる案件が決まりますが、M&Aで経営規模を拡大すれば、より大きな公共事業に入札することも可能です。入札できる工業事業が増えれば、市場での優位性を高めることにもつながるでしょう。

建設コンサル業界におけるM&A成功のポイント

建設コンサル業界でM&Aを成功させるためのポイントを、2点紹介します。

建設業許可の引き継ぎ方法を確認する

M&Aのスキームにより、建設業許可の引き継ぎ方法が異なります。株式譲渡では許認可をそのまま引き継ぎますが、事業譲渡では時間がかかり、空白期間が生じる可能性があります。業務を円滑に進行させるためには、スキームに応じた引き継ぎ方法を確認し、適切に実施することが必要です。

粉飾決算が無いか確認する

買い手側の注意点として、売り手企業に粉飾決算が無いか確認しなければなりません。粉飾決算とは簿外債務と偶発債務の2種類です。簿外債務は退職給付引当金や未払い給与など貸借対照表に載っていない債務であり、偶発債務は顧客トラブルや損害賠償責任問題などです。これらのリスクは帳簿確認だけでは判断できないため、M&Aの専門業者へ調査依頼するか、企業間で話し合う対応が必要となります。

建設コンサル業界における今後のM&Aの課題と展望

建設コンサル業界のM&Aは、労働力不足に向けた対策として効果が見込まれます。その他、業界が抱えるさまざまな課題への対策として、今後もM&Aは増加が見込まれます。

労働力不足への対策になる

日本の建設業界は、労働力不足と技術承継の課題に直面しています。高齢化が進み、技能者の約25.7%が60歳以上です。10年後には多くが引退する見込みであり、技術やノウハウの次世代への承継が大きな課題といえるでしょう。

また、日本の人口減少により労働力の確保が難しくなり、労働力不足が一層深刻化しています。特に、団塊世代が定年を迎えることで労働力不足が深刻化する問題(2025年問題)に対しては、早急な対策が必要です。

M&Aは、採用や育成の手間をかけずに、即戦力となりえる人材を確保できるため、深刻化する労働力不足への対応策となります。

今後もM&Aは増加傾向が続く見込み

建設業界のM&Aは、今後も増加傾向が続く見込みです。その理由としては、前述の労働力不足対策に加えて、業界が広いため、隣接業種が豊富でシナジーが生まれやすい業界の特性が挙げられます。具体的には不動産業界やIT業界とのM&Aが多く、内装工事会社やビルメンテナンス会社、設計システムの会社、設計事務所、セキュリティ機器卸売会社、電気工事会社などの事例も見られます。

また、2024年4月より設けられた時間外労働の上限規制が、業績に与える影響も無視できません。これらの問題を解決し、事業を継続していくためにも、建設コンサル業におけるM&Aは今後も盛んに実施されるでしょう。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。


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